フラミンゴ

ケニアは地図上で見るとアフリカ大陸の東に位置しており国は概ね5角形になっている。総面積は日本の約1.6倍。東はソマリア、北はエチオピアとスーダン、西はウガンダ、南はタンザニアの各国と接し、南東にはインド洋が広がっている。当然ながらそれぞれ接している国々との間には国境がある。日本は島国なので他国と地続きの国境というものはない。がしかし今でいう県が昔は尾張、美濃、信濃(それがそのまま県になった訳ではない)などと呼ばれていた時代、それぞれの隣国との間には国境(くにざかい)というものがあって自国から他国に行くには関所を通らなければならなかった。関所では挨拶だけで通れた人もおり、身分姓名・他国に行く目的を申し立て、身分証明となる手形を提示しなければならない人もいた。そういった関所は当然ながら人々が往来する道に設けてあり、手形を持たない人は関所を避け山の奥深く茨や潅木で肌をギザギザにしながら山を越えていたのである。いわゆる密入国だ。

ケニアからタンザニアに行くには空路、海路、湖路、陸路がある。それぞれ言うまでもなく飛行機、船、車を使って行く。ケニアを出国しタンザニアに入国するとどちらもイミグレーションでパスポートに出国、入国スタンプを押してもらう。ところが国境周辺に住むマサイの人々は国境だろうが道のないところだろうが何の制約も受けず自由に行き来している。ライオンや象、キリンなどの野生動物と同じだ。動物だけでなく鳥にも国境というものはない。フラミンゴはケニアのナクル湖、ボゴリア湖に多く生息しているが毎年大雨季の前3月~4月になると産卵の為にタンザニアのナトロン湖に飛んでいく。

3ヶ月程経って雛が飛べるようになると親子共々ケニアに戻ってくる。ナトロン湖から国境を越えてケニアに入るとすぐマガディ湖がありここにもかなりの数のフラミンゴがいる。ここは大地溝帯の中でも海抜が低く地中から湧き出て来るのは水ではなくソーダの含まれた約45℃のお湯である。その為15km程下流には塩田があって結構大掛かりな精製工場がある。このお湯の湧き出している所は人が肩まで浸かれる深さになっていてフラミンゴを見ながら温泉気分にひたれる。又すぐ横にテントを張って月の光で何度もイイ気分にもなれる。砂漠の中に湧き出している本当の露天風呂だ。

ところが夜になるとチーターやハイエナがフラミンゴをハンティングに来るのでフラミンゴは助けを求めるように我々人間のすぐ近くまで寄ってくる。普段は50m以内には近づけないのだがこの時ばかりはキャンプから10m位のところまで向こうから近寄ってくる。

ケニアでフラミンゴの生息数で名を知られているのはナクル湖だがその北のボゴリア湖にも多い。ボゴリア湖、ナクル湖、マガディ湖、ナトロン湖は大地溝帯の中で北から南へ殆ど一直線に並んでいる。そしてその全てがソーダ湖で遠浅になっている。そして又餌を求めてフラミンゴはこれらの湖を移動するが移動はいつも夜である。それも満月ではなく満点に星がキラメイている夜に限られる。朝目覚めてテントから出て見るとフラミンゴが全くいなくなっていることがある。『ア~、夕べの内にボゴリアに移ったんだナ…』とフラミンゴの姿が見えない淡いウツロな戸惑いの中でそれでも野生の時が進んでいたその中で自分も呼吸をしていたんだということに温かいウレシサがあった。